株式投資は日本取引所のいずれかの市場に上場している株式を対象に行うのが一般的です。所謂上場企業は売上高、従業員数、資本金額、発行済株式数などがとても大きな会社ばかりで、平たく言うと簡単には倒産しない会社ばかりです。
しかし倒産しにくいからといっても未来永劫上場が維持されるものではありません。日本取引所グループが投資家保護のために一定の基準を設け、投資家が不測の損害を被る前にその企業を上場廃止にする仕組みを作っています。
ここで注意したいのは、上場廃止イコール経営状態が悪い、ではないことです。上場を廃止する理由は経営のスリム化や株式市場から資金調達する必要性が薄れてきた等の財務的理由もあります。
このページでは日本取引所グループのHPに載っている上場基準を簡単にまとめています。上場廃止のIRが発表されたときにその意味を的確に理解する一助になれば幸甚です。
日本取引所グループは会社規模に応じて、市場の大きな順にプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に分けています。
それぞれの市場ごとに上場基準が設定されていて、その基準を満たさないと株式を上場することができません。そして冒頭で申し上げたとおり、株式を上場したあと後に、会社が上場企業として適切でない状況になった場合は上場を廃止させることになるので、上場を維持するための基準もあります。
また会社が上場維持基準を満たしていても、その会社が不正や財務諸表上で虚偽表示をしていた場合は投資家が不測の損害を被るので、そのような事態になったときに速やかに上場を廃止させるための上場廃止基準もあります。
ここからは審査基準、維持基準、廃止基準の順番で市場ごとの基準を表形式で簡単にまとめました。
事業継続年数や虚偽記載又は不適正意見等に関しては省略しています。
市場名 | ||||
項目 | 単位等 | プライム | スタンダード | グロース |
株主 | 数(_人以上) | 800 | 400 | 150 |
流通株式 | 数(単位以上) |
20,000
|
2,000 | 1,000 |
時価総額(_億円以上) |
100 |
10 | 5 | |
比率(_以上) | 35% | 25% | 25% | |
時価総額 | _億円以上 | 250 | なし | なし |
連結純資産の額 | _億円以上 | 50 | 正 | なし |
a.利益 | 最近_年間で_円以上 | 2年25億 | 1年1億 | なし |
b.売上高 |
最近_年間で_円以上 |
1年100億 |
なし |
なし |
c.時価総額 |
最近_年間で_円以上 |
1年1,000億 |
なし |
なし |
【補足】
・「なし」は不問を意味します。
・正は金額が正の値であることを意味します。
・利益、売上高、時価総額についてプライムは、a又はbかつcが条件となります。
市場名 | ||||
項目 | 単位等 | プライム | スタンダード | グロース |
株主 | 数(_人以上) | 800 | 400 | 150 |
流通株式 | 数(単位以上) |
20,000
|
2,000 | 1,000 |
時価総額(_億円以上) |
100 |
10 | 5 | |
比率(_以上) | 35% | 25% | 25% | |
売買代金 | _平均売買代金 | 1日0.2億円以上 | 月10単位以上 | |
連結純資産の額 | _億円以上 | 正 | 正 | なし |
時価総額 |
_億円以上 |
なし |
なし |
40 |
【補足】
・「なし」は不問を意味します。
・正は金額が正の値であることを意味します。
・時価総額は上場10年経過後から適用されます。
次のいずれかに該当した場合に上場廃止となります。
項目 | 廃止基準 |
上場維持基準への不適合 |
原則1年以内に適合状態に戻さないとアウト。 当該状態となった時から起算して3月以内に 「上場維持基準に適合するための取組及びその実施時期」の計画書を提出しなければなりません。 |
有報の提出遅延 | |
虚偽記載又は不適正意見 | 取引所が上場維持は困難であることが明白と認めるとき。 |
特段注意市場銘柄等 | |
上場契約違反等 |
|
その他 |
よく適時開示情報で公開される「上場維持基準への適合に向けた計画について」はここの話です。
計画書には、現在満たしていない要件、それを満たすための施策が書かれています。
プライム市場は維持基準のハードルが高いので、ちょっとした外部環境の変化ですぐ基準数値を割り込んでしまいます。
この計画書の公開が株価の材料になるかといえば、ならない場合が多そうです。ですが業績の抜本的な改善案がごく稀に出てくるかもしれません。そのときは買い玉を建てて株価の動向を楽しむのもよさそうです。