第一屋製パン(2215)が2020年12月末の株主向けを最後に優待を廃止しました。理由は公平な利益還元とコスト見直しとの事です。(引用ZAIONLINE より)
長らく営業赤字が続いていた第一屋製パンが2023年12月期の決算において営業利益が黒字回復し、単体の当期純利益で617百万円を上げました。
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況があると言われるところまで追い詰められた企業集団が、株主優待を廃止してまで経営の立て直しを図った努力が結実し始めています。
多様化するパンと縮小するパン市場
東京都内のベーカリーショップのお洒落な店内には、美味しそうな総菜パンや菓子パンが所狭しと並んでいます。季節の変わり目には新商品が登場して常連客を飽きさせません。街のパン屋さんのハイレベルなサービスの背景には何があるのでしょうか。
パン市場全体の規模は、近年の人口減少と高齢化の影響を受けて縮小傾向にあります。
その一方で大手スーパーやコンビニエンスストアでプライベートブランドのパンの販売量が増し、パンの販売業者の競争が激しくなっています。
さらにロシアのウクライナ侵攻以降は小麦粉などの原材料価格が高騰し、パンの製造原価が高くなっています。
減りゆくパンの消費者と利幅が、お店に休みなき努力を求める構図が見えてきます。
激しい競争に巻き込まれる第一屋製パン
この市場で生き残るための最良の手段はヒット商品を出す事でしょう。消費者のニーズを満たす商品であれば、価格競争力を持てますし、リピート購入が期待できます。
ところが第一屋製パンは、高い技術力と資本力を持ちながらヒット商品に恵まれません。下の画像のレーズンサンドは何十年も親しまれているヒット商品で、私も数えきれないほど食べてきましたが、これに続く商品が誕生していません。
第一屋製パンの商品の中で、私は個人的に北海道生クリームのミルククリームパンの安心感のある美味しさが好みで、同じ思いの消費は多いと思います。しかし決算の数字を見る限り、ヒット商品がもっと必要な状況でした。
そして2022年12月期の決算において第一屋製パンは遂に継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象及び状況の存在があると発表されました。6期連続営業赤字、2021年期から2年連続して流動負債が流動資産を上回る状況がその原因です。
第一屋製パン連結決算短信より (単位 百万円) | ||||
期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 |
親会社帰属 当期純利益 |
2020/12 | 24,201 | △462 | △354 | △368 |
2021/12 | 23,864 | △633 | △523 | △739 |
2022/12 | 24,390 | △669 | △554 | △1,145 |
2023/12 | 26,442 | 597 | 617 | 474 |
しかしそこから第一屋製パンは立ち直りました。マーケティングを強化して既存商品のリニューアル、横浜工場の閉鎖、ポケモンパンのようなキャラクター商品の強化により、売上高が前期比107.7%になり、原価低減効果もあり、営業利益は597百万円になりました。
経常利益および親会社帰属当期純利益ベースでも黒字になり、疑義も解消されて、最悪の状況を脱したように思われます。
第一屋製パンを取り巻く経営環境は依然厳しいですが、今後も黒字を維持させて、株主優待を復活してもらいたいと思います。